管理委託契約であれば、契約期間の途中でも解約を申し入れて賃貸管理会社を変更できます(サブリース契約は別の確認が必要です)。今の契約の確認、新しい管理会社との契約、解約通知、入居者への通知、引き継ぎの順に進めるのが基本です。

本記事はオーナー(貸主)向けに、解約から切り替え完了までの流れと、各段階で確認する書類・お金・通知の内容を整理します。変更するかどうか迷っている段階なら、先に「避けたい賃貸管理会社の特徴」で今の管理状況を点検しておくと判断しやすくなります。

賃貸管理会社の変更にかかる期間と全体の流れ

解約予告期間が3か月の契約で予告期間を満了して解約するなら、新しい管理会社選びを含めて4か月以上を見ておくと無理がありません。手順は契約確認、新会社の決定、解約通知、入居者通知、引き継ぎ、切り替え後の確認の6段階です。

予告期間は契約ごとに異なり、管理報酬相当額を払えば予告期間を待たずに解約できる契約もあります。予告期間が短い契約でも、書類や敷金の引き継ぎと入居者への通知には一定の準備期間が必要です。

変更までの6つの手順

変更までの手順は、今の契約の確認、新しい管理会社の決定、解約通知、入居者への通知、引き継ぎ、切り替え後の確認の6つです。前半はオーナーが判断し、後半は新旧の管理会社が実務を進めます。

手順主な内容主に動く人
1. 今の契約を確認する解約予告期間、違約金、契約期間、契約の種類を確認オーナー
2. 新しい管理会社を決める重要事項説明を受け、管理受託契約の内容と開始日を決定オーナー・新管理会社
3. 解約を通知する契約で定めた期限までに書面で解約を申し入れるオーナー
4. 入居者へ通知する切り替え日の1か月前を目安に、変更日・新しい連絡先・振込先を知らせる新旧管理会社・オーナー
5. 引き継ぎを行う契約終了時に書類・鍵・預かり金を引き渡し、滞納状況を報告する旧管理会社・新管理会社
6. 切り替え後を確認する初回の送金明細、滞納の引き継ぎ、問い合わせ先を確認オーナー

賃貸住宅管理業法の登録業者は、管理受託契約を結ぶ前に、原則としてオーナーへ書面で重要事項を説明する義務があります(第13条)。手順2ではこの説明で、管理開始日と引き継ぎを誰が進めるかを確認しておきます。

切り替え日を決めるときの考え方

切り替え日は旧契約の終了日と新契約の開始日を同じ日にそろえ、家賃の精算が分かりやすい月の区切りに置くのが基本です。終了日と開始日がずれると、その間の入居者対応を誰がするのかが曖昧になります。

解約予告期間が「3か月前まで」の契約なら、切り替え日から逆算して通知の期限を決めます。現在の状況を整理してから日程を組みたい場合は、「管理会社診断」で確認したい項目を洗い出せます。

解約前に今の管理委託契約で確認すること

解約前に確認すべきは、解約予告期間、中途解約の違約金、契約期間と自動更新、契約の種類の4点です。この4点で、いつ変更できるか、費用がかかるかが決まります。

解約時にかかる費用の全体像は「賃貸管理でかかる費用まとめ」でも整理しています。

解約予告期間と違約金の条項

予告期間と違約金は、手元の管理委託契約書に書かれた数字が基準です。国土交通省の標準契約書の数字をそのまま当てはめることはできません。

平成30年3月に国土交通省が策定した賃貸住宅標準管理委託契約書は、3か月前までの文書による解約申入れを例示していました。3か月分の管理報酬相当額を払えば随時解約できるとも定めていましたが、現行の賃貸住宅標準管理受託契約書では同じ条項の月数が空欄になっており、当事者が個別に決める形です。

「標準は3か月」という説明を見かけても、自分の契約が1か月や6か月のこともあります。解約条項と違約金条項は必ず契約書の原本で確認し、分からない点は旧管理会社へ書面で問い合わせておくと、後の食い違いを防げます。

サブリース契約だった場合

サブリース(一括借上げ)はオーナーが管理会社へ物件を貸す賃貸借契約なので、管理委託契約と同じ手順では終了できない場合があります。契約書の表題が「マスターリース契約」「特定賃貸借契約」などになっていないかを確認します。

サブリースでは、オーナーからの解約申入れに正当な理由が求められる場合があります(借地借家法第28条)。この場合は解約の可否そのものから個別に確認が必要なので、契約内容を専門家に相談してから手順を組みます。

解約通知の出し方と記載する内容

解約通知は、新しい管理会社との契約内容が固まってから、契約で定めた期限までに書面で出します。送った日と届いた日が記録に残る方法を選ぶと、予告期間の数え方で揉めにくくなります。

新しい管理会社が決まる前に解約通知を出すと、旧契約の終了日までに次の管理先が決まらず、管理の空白期間が生じるおそれがあります。通知の前に新しい管理会社と開始日を合意しておく順番が安全です。

解約通知書に書く項目

解約通知書には、物件名、契約日、解約日、引き継ぎを依頼する書類とお金、連絡先の5項目を入れます。引き継ぎの依頼まで同じ書面に書いておくと、旧管理会社との認識のずれを防げます。

国土交通省の標準管理受託契約書は、契約終了時に管理会社が書類と保管金銭を引き渡し、滞納状況を報告すると定めています(第22条)。手元の契約書にも同じ趣旨の条項があるかを確認し、通知書で引き渡しを求めます。

送付方法の選び方

解約通知は、内容証明郵便に配達証明を付けて送ると、送った内容と届いた日を後から証明できます。予告期間の起算日を争いにくくするための方法です。

メールや管理会社の専用フォームで受け付ける契約もありますが、その場合も送信記録と受領の返信を保存しておきます。電話や口頭だけの申し入れは、日付の証拠が残らないため避けます。

旧管理会社から引き継ぐものと敷金の扱い

旧管理会社から引き継ぐのは、賃貸借契約書などの書類、鍵、預かっている敷金などの金銭、家賃の滞納状況です。敷金を入居者へ返す義務は、管理会社が変わってもオーナーに残る点に注意が必要です。

引き継ぎは新旧の管理会社の間で進むことが多いものの、受け取った物と金額はオーナー自身も確認しておきます。

引き継ぎ書類と鍵の一覧

引き継ぎでは、入居者ごとの契約書類、物件の図面・点検記録・修繕履歴、鍵と鍵の貸与記録をそろえ、受け取った日と点数を記録します。

区分主な引き継ぎ物
入居者関係賃貸借契約書、重要事項説明書、入居申込書、更新契約書、保証契約の書類
建物・設備関係図面、法定点検や設備点検の記録、修繕履歴、保守契約書
鍵各住戸・共用部の鍵、鍵の貸与と交換の記録
お金と状況預かり敷金の一覧、家賃の入金・滞納状況、未精算の費用

書類の原本とデータのどちらを引き継ぐかも決めておきます。修繕履歴が残っていないと、次の修繕時期の判断が難しくなります。

敷金・預かり金の精算

旧管理会社が敷金を預かっている場合は、入居者ごとの預かり額の一覧と送金額を照合してから受け取ります。

民法では、敷金を受け取った賃貸人(オーナー)が退去時に残額を返すと定めています(民法第622条の2)。旧管理会社から敷金の引き渡しが済んでいなくても、入居者への返還義務はオーナー側に残るため、一覧の照合は省かないでください。

同法の登録業者には、受け取った家賃や敷金を自社の財産と分けて管理する義務もあります(賃貸住宅管理業法第16条)。預かり額に不明な点があれば、この管理状況の記録を示してもらうよう依頼します。

家賃保証会社・保険・保守契約の名義

家賃保証、火災保険、設備の保守点検などは、契約者が誰かによって手続きが変わります。契約ごとに名義と、管理会社が変わった後も続けられるかを確認します。

旧管理会社が契約者になっている契約は、解約や名義変更が必要になる場合があります。新しい管理会社と分担を決め、保証や点検が途切れる期間を作らないようにします。

入居者への通知と家賃振込先の切り替え

入居者には切り替え日の1か月前を目安に、新旧の管理会社名、切り替え日、新しい連絡先、家賃の振込先の変更有無を書面で知らせます。口座振替を使っている入居者は、振替先の変更手続きに日数がかかる場合があります。

標準管理受託契約書では、契約が終了したらオーナーと旧管理会社が入居者へ管理業務の終了を知らせるとしています(第23条第2項)。通知の作成と発送を誰が担当するかを、新旧の管理会社と事前に決めておきます。

通知文に入れる項目

通知文では、旧管理会社の管理終了と新しい管理会社の開始を同じ書面で示し、オーナー名も添えます。入居者が正規の変更だと判断しやすくなります。

突然の振込先変更の案内は、入居者から不審に思われることがあります。旧管理会社の案内と新しい管理会社の案内が別々に届くと混乱しやすいため、1通にまとめるか、同じ時期に届くよう調整します。

切り替え月の家賃の二重払い・未入金を防ぐ

切り替え月の家賃をどちらの管理会社が受け取るかを決め、旧口座へ入金された分の送金方法を旧管理会社と取り決めておきます。

家賃を前月中に払う契約では、翌月分を旧管理会社が受け取った後に契約が終わることがあります。その分をいつ、どの口座へ送るかを解約前に書面で確認しておくと、入金漏れを防げます。

切り替え後に確認すること

切り替え後は、最初の送金明細、滞納の引き継ぎ状況、入居者への連絡先の周知、募集中の部屋の広告の4点を確認すれば、変更が完了したと判断できます。

標準管理受託契約書では、管理会社が定期にオーナーへ管理業務の報告をすると定めています(第15条)。最初の報告で上の4点が確認できるかを見ておくと、切り替え直後の抜け漏れに早く気づけます。

管理を任せる業務の範囲は「賃貸管理」で、相談から管理開始までの流れは「ご相談から管理開始まで」で紹介しています。

よくある質問

管理会社を変えるとき、入居者の同意は必要ですか

管理会社の変更は、オーナーと管理会社の間の管理委託契約を切り替える手続きなので、入居者との賃貸借契約はそのまま続きます。入居者の同意は通常必要ありませんが、変更日や連絡先、振込先は書面で知らせてください。

管理会社の変更に費用はかかりますか

予告期間を守って解約すれば違約金がかからない契約もありますが、中途解約の違約金や新しい管理会社の初期費用が発生する場合があります。金額は契約ごとに異なるため、旧契約の解約条項と新しい管理会社の見積書で確認してください。

旧管理会社が書類や敷金の引き渡しに応じない場合はどうすればよいですか

まずは契約書の契約終了時の条項を示し、引き渡す物と期限を書面で求め、それでも応じない場合は弁護士などの専門家へ相談してください。登録業者の法令違反が疑われる場合は地方整備局などへ通報できますが、行政窓口は個別の返還トラブルを解決する場ではありません。

家賃保証会社も変えなければいけませんか

保証会社との契約がどのような形で結ばれているかによって異なります。保証が継続できるか、新しい保証会社への切り替えが必要かを、旧管理会社と保証会社に確認してください。

管理会社の変更を相談したいときはどこに連絡すればよいですか

今の契約書と入居状況が分かる資料を用意したうえで、変更先の候補となる管理会社へ相談します。候補の会社には、引き継ぎを誰が進めるかと管理開始日の目安を確認しておくと比較しやすくなります。